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今回は、ビジネスアイデア発想のための視点をお伝えします。
今回はお話しするのは、「全く新しいものを思いつく」といった難しいものではなく、既存のビジネスの視点を変えるだけで新しいビジネスアイデアを生み出せるようになるヒントについてです。
ビジネスアイデアには、大きく分けて二つのタイプがあります。
一つは、全く新しいビジネスアイデアを思いつくというもの。
もうひとつは、既存ビジネスの隙間や問題を解決するビジネスアイデアで勝負するもの。
今回は、野菜通販大手の「らでぃっしゅぼーや」のケースをもとに、後者のタイプのビジネスアイデアを見つけるためのポイントについて説明します。
らでぃっしゅぼーやとは
らでぃっしゅぼーやは、有機野菜の宅配通販サービスです。
2010年には10万人を突破している人気サイトです。
らでぃっしゅ:二十日大根(生命力の強い大根)
ぼーや:(子供)
「力強い食べ物を次世代に残す」事を理念としている会社です。
らでぃっしゅぼーやの注目すべきポイントとして、商品一品一品を注文する形式ではなく、
有機野菜は全てダンボールに入れて宅配されます。
ダンボールのサイズはSS(2205円) S(2205円) M(2625円) L(3045円)と用意され、会員は自分のニーズにあったサイズを注文します。
これが毎週一回、月に4~5回届くサービスです。
それでは、らでぃっしゅぼーやが利益を上げるために取り組んでいるポイントについても簡単にご紹介します。
①仕入れ
- 100%契約農家から仕入れる
- 契約は収穫の6ヶ月前にキロいくらで仕入れるか決める。
これにより、関係者にはそれぞれ以下のようなメリット生まれました。
【農家のメリット】
通常であれば野菜は天候などに左右し豊作・不作によって値段が変わるため収入が計算できず、生産に集中できなくなってしまいますが、6ヶ月前から売値が決まっているので、安心して生産に集中できるようになりました。
【らでぃっしゅぼーやのメリット】
まず、有機野菜を少し安く仕入れることが出来るようになります。
さらに、有機野菜で使用が認められている農薬・肥料を記入させ、畑の場所を把握することで品質を徹底管理できるようになりました。(どんなふうに野菜が作られているかが丸わかり)
【顧客のメリット】
ダンボールと一緒に同封されている紙に、品目、農業者の名前、住所、電話番号が全て記載されるので、誰の作ったものか分かり安心して食べられます。
(実は、この事は、農家にとっても客の存在が見えやすくなり、結果としてやりがいにつながりました。)
②箱詰め
箱詰めする野菜は、すべてらでぃっしゅぼーやが決めてダンボールに詰めます。
会員は野菜の種類を選べません。
それでも、このようなメリットが生まれています。
【らでぃっしゅぼーやのメリット】
野菜によって収穫量が異なるので、詰める野菜を最初から決めると数が足りなくなり欠品が生じる可能性があるるので、そうしたリスクを軽減することが出来ます。
同じMサイズを頼んでも、中身は家によって違った野菜になることがあります。
中身はもちろん適当に入れているわけではなく、過去の配送データーから偏らないように管理・配慮しています。
【顧客のメリット】
毎回、注文する手間が省け、何が届くか楽しみ、ワクワク感を味わえて楽しみにしている会員が多い。(福袋感覚)
一見価格だけを見ると高いと思いがちだが、野菜は不作・豊作で値段が上下するため、年間を通してみれば結果的にスーパーで買っても宅配しても変わらないらしいです。
取引関係者の新しいWin&wWinを作る
さて、らでぃっしゅぼーやの例からどんなポイントを見つけることが出来るでしょうか?
一つ注目すべきポイントとして取引関係者の問題を解決し、全ての取引関係者にとってWin&Winになる仕組み・落とし所を見つけるということが挙げられます。
まず、最初に「農家が抱えていた問題にアプローチ」
野菜販売において、「流通業者」「生産者」「消費者」の三者が存在します。
生産者が従来抱えていた問題に、野菜は天候などに左右し豊作・不作によって値段が変わることで、農家経営が非常に不安定になっていました。
らでぃっしゅぼーやは、契約農家に対して、収穫前に契約をしてしまうことで、農家経営の安定化という解決策を提供しました。
農家にとってのWinです。
そのかわり、収穫前に契約するわけですから当然、らでぃっしゅぼーやにとってはリスクを抱えることになります。
そこで、箱詰め販売にすることで、仕入商品の品不足による損害というらでぃっしゅぼーやが抱えたリスクを低減しました。
らでぃっしゅぼーやにとってのWinです。
箱詰めにすることで、会員としては常に欲しい商品を注文する事ができなくなります。
想定していない野菜が届くかもしれないというリスクを抱えることになります。
ただ、「何が届くかわからない」という事をリスクとして捉えない会員にとっては、宅配される有機野菜の、品目、農業者の名前、住所、電話番号が全て記載されており、誰の作ったものか分かり安心して食べられるメリットの方が多いのであれば問題有りません。
会員にとってのWinです。
全ての関係者にとってメリットが生まれる「落とし所を見極める」
ここで、注目していただきたいのは、Win&Winといっても、三者にとって必ずしも最高の条件を引き出したわけではないということです。
全ての関係者にとって最高の取引条件を引き出すのではなく、妥協点・落とし所を見つけるというのがポイントです。
らでぃっしゅぼーやの例でいうと、「自分が注文した野菜がこないと気が済まない」という事ではなく、「必ずしも決まった野菜が届かなくても、品質の良い野菜が届けば十分」という、会員が妥協できる落とし所を見つけだしているわけですね。
最高の条件を見つけなくても、取引関係者の抱える問題を解決し、他の関係者が妥協できるポイントを見つけることで新しいビジネスアイデアを思いつくことが出来るという点を知っていただければと思います。
あなたの業界にもWin&Winを築くことのできる「落とし所」があれば、是非ビジネスアイデアを思いついてみてください。